好評シリーズ!第10回古民家xビブリオバトル in 河伯洞

京子さん
古民家×ビブリオバトル、おひさしぶりです。ようやく開催となりました。
開催記念第10回はとっておきの舞台。かつて日本有数の炭鉱の町として栄えた北九州・若松にある古民家 「河伯洞」 。北九州市指定文化財の芥川賞作家火野葦平の旧宅です。河童の棲む家という意味のその名の通り、葦平の愛した河童たちに随所で出会うことができます。
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玄関をあがるとすぐ目に入る立派な木彫の亀に気づかない人はいないでしょう。木にできたキズを隠すための細工なのだそう。職人の高い技術と遊び心を感じます。そして広い縁側の床は立派な一枚板の桜。縁側には、葦平が日夜語りかけたというお気に入りの河童が私達をおどけた表情で出迎えてくれます。
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広々とした和室に目を向ければ、「土と兵隊」「麦と兵隊」「花と兵隊」の兵隊もの三部作や、「花と龍」など代表作にちなんだたくさんの品々が展示されています。2階には葦平が作品を執筆し自ら命を断った書斎。じっと眺めていると知らず込み上げる想い…。

写真撮影:ご参加の林京子さんより。http://wkikyoko.exblog.jp/23732768

写真撮影:ご参加の林京子さんより。http://wkikyoko.exblog.jp/23732768

炭鉱町の血気盛んな荷役たち、日中戦争に赴き接した仲間の兵隊たち、葦平作品には彼らを勇気づけ奮い立たせる血の通った人間らしい眼差しに満ちています。激動の時代に生きて、死んだ、葦平の足跡は、JR若松駅前の火野葦平資料館でもたどることができます。また若戸大橋を中心に洞海湾の眺め素晴らしい高塔山には河童封じの地蔵尊など、河伯洞周辺には葦平作品ゆかりのスポットが点在しており、炭鉱の港町の景観とともに文学散歩もおすすめです。
DSCF9356<火野葦平の三男・玉井史太郎さんのお話>
河伯洞の管理人でもある史太郎さんに、葦平の文筆活動と河伯洞のお話を伺いました。
戦後の昭和35年1月24日、葦平は河伯洞2階の書斎で自ら命を断ちました。その三回忌となる命日に母・マン死去、さらに十三回忌の命日には妻・ヨシノが後を追うように死去。この不思議なつながりに市は河伯洞の電話番号下四桁を0124にしたという驚きのエピソードには鳥肌が。
史太郎さん 大工 鉄郎さん<北九州の大工・赤峰稔朗さんのお話>
続いて古民家イノベーションプロジェクト発起人、古民家×ビブリオバトル主宰の大工さんから、あらためて古民家のお話。

◆古民家の定義とは?
分かりやすいところで、茅葺き屋根の家は古民家?
そうです。現代では建築基準法により火災のおそれのある茅葺きを使った住宅は制限され新しく建てることができないので、現存する茅葺き屋根の家は古民家とみなして良いでしょう。文化財としての基準は、築50年以上で、一般的には昭和23年以前の建物を言うことができます。また現代の建築物が耐震性を強化する在来軸組構法で造られるのに対し、古民家は免震性の高い伝統構法で造られます。民家は住宅と同義ではなく、年貢を収める民の住む家のこと。武家屋敷や書院造りは含まないと言えます。
(それほど裕福でない半農半士の場合はこれに限らずとか)

◆今ある古き良きものから学ぶ
人々が暮らす地は海辺、山地、平地と変わります。それに応じて家の造りも変わります。
それぞれの気候風土に合わせ、日本人の伝統技術と生活の知恵や文化の結晶が古民家なのです。各地の古民家を訪れて、建物から受け取れる暮らし向きを知ることは面白いです。
木材や天然素材を使用した古民家はいずれ土に還ります。しかし、化学合成物を多用する近代建築物は自然分解されず、後世へ負の遺産を残し続けているのです。今あるものを大事に使うこと、古民家をふまえた持続可能な社会があることに気づいてほしいと思います。

建築デザイナーが造るものは「作品」、住宅メーカーが造れば「商品」、
大工が造るものが「家」だという言葉に大工の矜持と強い願いを感じます。
じっと聞き入る皆さん。
古民家×ビブリオバトルを続ける目的はここにあります。
より多くの人が古民家に触れ、その良さに気づいてほしい。そして、もっとも人の暮らしに原点回帰できる古民家という空間に集うことで、初対面同士でも奥深い郷愁を共有でき、シンプルに本を通してふれあい、和を形成できることが最大の魅力なのです。

<ビブリオバトル始まりました!>
それではいよいよビブリオバトルに進んでまいりましょう。
司会を勤めるのは、天神にあるユニークな本屋・書斎りーぶるでビブリオバトル「りぶりおバトル」を推進する林鉄郎さん。どこかユーモラスで穏やかな語り口調が古民家にも馴染み皆さんをリラックスさせてくれます。ビブリオバトルのことやルールはビブリオバトル普及委員会公式サイトでチェック。

今回は飛び入りご参加&ご推薦の方も含めて発表者8名、2ゲーム開催。テーマはありません。お気に入りの本を紹介して頂きました。
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◆第1ゲーム
・『知らざあ言って聞かせやしょう(声にだすことばえほん)』河竹黙阿弥 飯野和好 齋藤孝(教育学)/ほるぷ出版
・『江戸しぐさの正体-教育をむしばむ偽りの伝統』原田実/星海社
・『土と兵隊・麦と兵隊』火野葦平/新潮文庫
・『日本的感性-触覚とずらしの構造』佐々木健一/中公新書

第1ゲームのグループは、はからずも古民家・河伯洞を意識した本が集まりましたね。
気になるチャンプ本は・・・
『日本的感性-触覚とずらしの構造』に決定!
和歌に表れる日本人の美的感性を語る一冊。おめでとうございます!
ほかにも素晴らしい本をご紹介くださった皆さん、ありがとうございました!

ここで「私も大好きな本を紹介する!」と6才のみーちゃんが特別参加。エキシビジョンとして5分間の発表にチャレンジ!最初は最前列から前のめりに注がれる視線に緊張して言葉が出ませんでしたが、司会の優しい鉄郎おじさんに促され少しずつ好きな場面やお気に入りのキャラクターを教えてくれました。
おばけのアッチねんねんねんね』角野栄子/ポプラ社
みーちゃん、ありがとう!たくさん本を読んでまた遊びに来てくださいね!

◆第2ゲーム
・『口福無限』草野心平/講談社文芸文庫
・『賢者の石』コリン・ヘンリ・ウィルソン 中村保男/創元推理文庫
関連書として紹介されたこちらの本に思いがけず話題集中!
(『ネクロノミコン-アルハザ-ドの放浪』ドナルド・タイスン 大瀧啓裕/学研パブリッシング)
・『織田信長-戦国最強の軍事カリスマ』桐野作人/KADOKAWA
・『ユタとふしぎな仲間たち』三浦哲郎/新潮文庫

若手役者さんに効果音満載のSFおじさん、歴史ソムリエ、読み聞かせのプロ、と個性豊かな方々による本の紹介となった第2グループ。
チャンプ本は果たして?!
『ユタとふしぎな仲間たち』に決定〜!
河伯洞にも座敷わらしが河童と仲良く暮らしているのでしょうか。おめでとうございます!
そしてどれも読みたくなる気になる本ばかり、ご紹介のバトラーの皆さん、ありがとうございました!
バトラーさん DSCF9350
残りの時間は思い思いに河伯洞を見学したり、気になる本のことなどご参加の皆さん同士で和やかに賑わいました。

さらにその後場所を移しての懇親会では、話し足りないとばかり、美味しいお料理に舌鼓を打ちつつお酒を酌み交わし、酔いどれビブリオバトルへ突入!
河伯洞では発表しなかった方々も思い切って好きな本を紹介して盛り上がりました。
この不思議な一体感が心地よいんですよねえ。
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第10回を迎えることができた古民家×ビブリオバトル。
開催にあたり、多大なご協力を頂きました河伯洞の玉井史太郎さんご夫妻をはじめ、関係各所の皆様、ご参加くださいました皆様へ心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました!

継続は力なり。
古民家イノベーションPRJ発足3年目、古民家×ビブリオバトルをきっかけに、新しいつながりや動きが生まれています。これからもどうぞよろしくお願いします!
次回もお楽しみに!
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文/市川紀子

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